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こいしノート

エッセイ読むのも書くのも大好き人間です、小説も。 

入院 笑話

 

年始め、八つの神社(※前々回のエッセイ「神社いろいろ 狛犬もいろいろ」)で、無病息災を祈願したのですが、三日後には感冒、治ると今度はインフルエンザ、ひどい目にあいました。

五日前に床を上げ、「入院 笑話」を書き始め、やっと、こいしノートに載せられます。

 

 

三年ほど前、便が滞った。こいしには、よくあることだが、今回のは痛みが伴う。それが不安で、病院の門をくぐった。結果、憩室と分かり、入院を強いられた。

医師は一週間ほどで良くなると言ったが、それどころか日に日に、痛みが激しくなっていた。

そのようなある日、Sさんという、看護師が採血に来た。そして顔を見るなり「血は良く出るほうですか?」との質問。適当にあしらったが、おかしな人だなあ? その印象を持った。

採血ホルダーの針が入り、そろそろ終わりかな? そう思った時

「もう一度・・・お願いします」

と、すまなさそうに言う。

嫌だけど仕方がない「どうぞ」の声を返した。すると

「ありがとう」の後「落ち着いて、落ち着いて」と、自分に言い聞かせていた。

血の出方の良し悪し言葉も相まって、大丈夫かなあ、この人となった。

それが現実となり、二度目も失敗。代わりの人が採血した。

 

腹部の痛みは相変わらずだった。憩室は誤診? 疑問を持ち、再検査を求めた。その結果、大腸内に膿瘍が出来ていた。

横臥の状態なら、痛みはないが、よじると猛烈だ。それを避けようと、日に何度かのトイレは、こうしていた。

横臥のまま膝を立て、身体を九十度回転させる。それから、そっと上半身を起こし、L字型にする。次に、点滴をしていない手を使い、お尻を少しずつ前進させる。そしてベッドの端まで来たら、両足を床に着け、ゆっくり立つ。

この行動には時間が掛かる。ある日、その余裕なく、寝具を汚してしまった。

 

隠したいが、臭いでばれるのは必至。そこで大急ぎ下ばきを取替え、取りあえずゴミ箱へ入れ、その後、呼び出しブザーを押した。すると、あのSさんが小走りで来て「どうされました?」と、どんぐり眼を見開き、言う。

ことの成り行きを告げると

「あら、そうだったの。お安いことだわ、直ぐ交換しますよ。その間、談話室にいて」

採血時のおどおどさは微塵もない。

個室(※担当医の指示)へ戻ると、汚れてない掛け布団まで、新しくなっていて、窓ガラスも拭かれ、カーテンも桃色のに取り替えてあった。乱雑に置いておいた、ワゴンの諸々も、きちんと整理してあった。

この行為に感謝を述べると

「汚れた所、まだあるわ」

黄色のタオル(※黄色は下用)をビニール袋から取り出し、しゃがみながら、言った。

そこだけは勘弁して! 丁重に断った。

「あら、私の仕事、取り上げるの?」

笑顔を作った。

 

それから三週間、朝の回診時、内科部長が「明日の血液検査で問題なければ、退院ですよ」と、にこやかに口にした。

嬉しい翌朝、顔が引きつった。Sさんが、採血ホルダーを持って来たからだ。こいしの表情に気づくと「まただったら、ごめんね。先に謝っておくわ」今回は余裕がある。

無事、三本採った、Sさん、帰りしな「後で、あの時の弁明、聞いて、ねっ」と言い、足早に去った。

採血の結果は良好で、退院の許可が出た。

相部屋の人に挨拶し、ロビーに出ると、Sさんが私服姿(※夜勤明け)で待っていた。そして、あの時の話しを始めた。

「二年間、リハビリセンターにいたの。そこでは採血の仕事ないの。あの日はね、配置替えの初日で、私、カルテ見てたの。そしたら、主任が、こいしさんの採血を命令したの。

二年のブランクだし、急でしょう、とても不安だったわ。それと、こいしさんの腕、採血や点滴の針の跡がいっぱで、採り易い場所ないのよ。私、焦っちゃって。痛かったでしょう、あの後。本当にごめんなさい」

「そうか、君も大変だったんだ。でも、今日は上手かったよ」

「ありがとう。実はあの日、看護科長に、こっぴどく怒られて、特訓させられたの。それで、勘とこつが戻ったの。リハビリに行く前は、上手だったのよ、本当よ。

それとこれ、渡しそびれていたのですけれど、お家に帰ってから、開けて、ねっ」

 と言って、花模様の分厚い紙封筒を差し出した。

 

家に戻り、心をときめかし開封すると、出てきたのは粗相した時、穿(は)いていて、ゴミ箱に取りあえず入れておいた、下ばきだった、綺麗に洗濯されている。

「捨ててくれれば良かったのに。だがまてよ、Sさんの親切、大切にしなければ。よし! 入院記念にしよう、額に入れよう」

 

病院はJRの沿線にある。時々の乗車で目に入った時、ふっくらして愛らしい、艶やかな顔の、Sさんが過ぎる。

  

 

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