こいしノート

エッセイ読むのも書くのも大好き人間です、小説も。 

スカシユリが咲いたら 思い出してね

 

流行り歌なら、小林旭の「熱き心に」、小説なら、渡部淳一の「化身」が発表された、昭和六十一年の猛暑日、生後一ヶ月の幼犬が家族の一員になりました。七月十日誕生なので、愛称は「ナナ」です。

 

父親は「ケンちゃん」。薄茶色のさえない、それも相当な雑種。母親は「メリーさん」。貴婦人のような名前ですが、白黒模様のやはり、相当な雑種です。

メリーの飼い主のN子さんは、ナナと一緒に生まれた茶色の犬が、ケンちゃんと似ているので父親だと信じています。ですが、逢瀬を見ていません。従って、ケンちゃんの飼い主に「責任取って」とは言えません。

仕方なしにN子さん、懸命に引き取り手を求め、そのかいあって、オスの三匹は探せました。ですが、残りは雑種のメス、誰もが首を横に振るばかり。

困り果てたN子さん、二匹を篭に入れ、やって来て、懇願しました。

「近所の好(よし)み、ハウスとセットで・・・・・・」

近所の好みはとても大切、引き取ることにして、改めて「どっち?」の目で見ました。

一匹は薄茶色で鼻が上を向いた、豚のよう。もう一匹は、こいしが小学一年の頃、家で飼っていた、ボーダーコリーにそっくり、なのでノスタルジーに駆られ、決めました。

 

ナナは芸を良くこなす賢い犬でした。半月も経たないうち「おて(手)」はもちろん、「ちんちん」、「おまわり」も、マスターしました。「おあずけ」は五分でも十分でもです。(※席を外すと、もうありませんけれど)

「どっちかな?」もします。それはこういった芸です。

両手のどちらかにビスケットを乗せ、それをナナに見せ「ぐう(※握る)」にして、背中の後ろへいったん隠します。再び前に出し「どっちかな?」と、手を交互に振ります。背中で移し変えない限り、ナナは当てます。そしてビスケットをゲット、その大げさな喜びに、誰もが微笑みます。

こいし、からかい好き、ビスケットを握る手を変えます。ナナは当然、間違えます。ビスケットは見せびらかすようにして、こいしの口へ。

恨めしそうな、その顔を見たさに二度目も同じようにします。ナナ、また、がっくり。ところが、三度目はこいしの両手に両手を、がばっと置きます。どうです、賢いでしょう。

「四度目はですって?」それは想像してください。

 

庭で放し飼いなので、外の空気も吸いたかろう、そうも考え、海や川、野や小山、ひばり鳴く田畑へと車に乗せて行きました。

楽しい思い出を数多く作ってくれたナナでしたが、十四年経った、平成十二年の春まだ浅い朝、悲しい別れになりました。

近年、犬用の墓地があるとのこと。お経を頼む人もいるという。マンション暮らしの人は生ゴミで、そんな話も耳にします。

「こいしは?」の、ご質問にお答えします。

離れたくないので、猫額の庭の中心部に埋葬しました。そして囲いの中に四季折々に咲く、花と低木を植えました。その中のスカシユリが、ナナの誕生日がもうすぐになると、決まって咲きます。

「ナナを忘れないでね。咲いたら、思い出してね」

と、代弁するかのように。

  

 

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ナナの化身? 今年も咲きました   玄関に飾りました 

 

 

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 メリーと一緒に 朝ごはん?     お昼ねタイム

右の白黒が ナナ

 

 

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生後 一ヶ月            右下はロン君 セントバーナードのように

                  大きくなったそう 両親のどっちかの血脈?

 

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 放し飼いの庭で           雨が降れば 駐車場

 

 

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