尊敬する もう一人 植村直己 さん
前回のエッセイ、「こいしノート」では、尊敬する二人の一人、オペラの大衆化に尽力する、岡村喬生さんを記しました。
今回は、もう一人の植村直己さんです。その根拠は世界初の五大陸最高峰征服や、犬ぞりでの北極点単独行(※人類史上初)及び、グリーンランド縦断です。
薫風が快いある日、植村さんの墓参を思い立ち「乗蓮寺(※板橋区)」へ、何年ぶりかで行きました。
(※5月9日の「こいしノート」)
合掌後、墓石に刻まれた「草野心平」の詩を黙読していると、老いた掃除夫が声を掛けてきました。
「蓮根駅(※都営三田線)のすぐ側に『植村冒険館』があるよ。フアンだったら、一度行ってみたら?」と、得意げに。
その時は明日にでも、そう思ったのですが、つい実現しないままでした。そんなある日、「植村直己単独行、冒険精神の原点をみつめる」と、書かれた写真入りのパンフレットを目にし「これは良い機会だ」そう考え、翌々日、訪問しました。
瀟洒(しょうしゃ)な建物の二階が会場で、犬ぞり演出(※実物大の犬ぞり)と、北極点到達時の実物大写真、北極点単独行・グリーンランド縦断時に使用した装備、外国放浪時代、五大陸最高峰登頂したさいの写真や資料が展示されていて、またセットされたDVDから、犬ぞり冒険とマッキンリー(※現・デナリ)登頂などが映し出されています。
これからは、DVDを見ての話です。
植村さんは「十分な計画と準備がなければ登頂や冒険は成功しない、生きて戻るのが前提」と語ります。そして、独身の頃は「女房がいたら、山には登れない」と、仲間に話します。ところが結婚すると「帰る場所はやっぱり女房のもとに」と、なります。
ですが、1984年の厳冬期「マッキンリー」に単独登頂成功後・・・・・・荒天がとても憎いです。
植村さんの、犬に対しての愛情に感動します。
そりを引き、一日、何十kmも走る犬たちは、氷の凹凸(おうとつ)で、足の裏の皮が擦り切れ、血を流します。植村さんは貴重な自分の衣服を犠牲にし、凍える手で犬のソックスを時間をかけて縫います。愛情をこめての一針一針、こいし、涙です。
以前、何かの情報で知った、犬ぞりのリーダー「アンナ」の話も感動です。
北極圏を求めて単独行中、氷の薄い場所にぶつかると、犬たちは植村さんの指示を無視し、それどころか、一瞬のすきに逃亡、アンナもです。
その現実に植村さん、人里へ向かうことに決め、歩き始めたその時、アンナが駆け足で戻ってきました、五匹の犬を引き連れて。アンナは連れ戻しに五匹を追ったのです。
この話を知った時、こいし、思いました。
アンナ、本当に犬なの? 人間の化身?
そのアンナは、旭山動物園で生涯を終えました。
年末恒例の「NHK紅白歌合戦(※昭和39年)」の審査員になった植村さん、アナウンサーのインタビューに応じる、ちょっと照れた人懐っこい笑顔、今でも鮮明な、こいしです。
特別展 パンフレット
冒険館 展示品
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